2021年10月9日
格安マウスピース矯正の問題点
マウスピース矯正が認知され、日本でも新しいサービスがドンドン導入されています。
その中で最近は「格安マウスピース矯正」も増えています。
格安マウスピース矯正が普及し、歯並びの重要性が認知されることはとても良いことだと思います。
一方で、トラブルも急増することが懸念されています。
具体的には
思ったような治療結果が得られなかった
格安だったのに終わってみればかなり高い治療費が必要になった
などです。
これらについて、私は矯正治療の専門医ではありませんが、私の考えをまとめます。
格安マウスピース矯正の利点
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手軽に始められる
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ごくごく簡単なケースにおいてはリーズナブル
格安マウスピース矯正の問題点
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矯正治療のゴール設定しないマウスピース矯正システムがある
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アタッチメントがない
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アタッチメントがあっても最適な形や位置ではない
それぞれについて詳しく説明します。
格安マウスピース矯正の利点
こちらは医院および患者様双方にとって手軽であるということです。
高額な機器や高度なシステム(シュミレーションや患者管理システム)が必要なければ導入経費が安くなります。
その分、治療料金も安く設定できます。
一般的にマウスピース矯正ではマウスピースの数が多くても少なくても料金が一定に設定されていることが多いです(マウスピース個数無制限プラン)。
これは作成するマウスピースの数が多くても少なくてもメーカに支払う料金が同じだからです。
また、メーカーによっては作成したマウスピースの個数だけ支払うシステム(セレクトプラン)もあります。
(クリアコレクトやシェアスマイルアライナーでは 無制限プラン/セレクトプラン を選ぶことができます)
この場合、マウスピースの数が少なければ治療費が安くなります。
格安マウスピース矯正のシステムはマウスピースを作成する数により治療費が変動するパターンが多いようです。
数枚程度のマウスピースで矯正治療が完了できるごくごく軽度のケースであれば治療費を安く見せることができるためです。
ところが10ステップ以上(上下でマウスピースが20個以上)の矯正治療計画であれば、上記のマウスピース個数無制限プランやインビザランGO(20ステップまで)の方が安くつくことが多いです。
ちなみに、この程度の軽度のケース(正中理解の改善)でも5ステップ必要です。

治療ステージはこちら
このケースは上顎のみの矯正計画です。
マウスピース矯正のシステムはクリアコレクトです。
もう1ケース紹介します。

こちらは上の歯のスキマが気になるのと、上の歯が下の歯に大きくかぶさっているのが気になるケースです。
このケースは8ステップ必要です。
治療ステージはこちらです。
このケースは上顎のみの矯正計画です。
マウスピース矯正のシステムはクリアコレクトです。
このように、ごくごく軽度の歯列不正でもそれなりのマウスピースの個数がお分かりになるかと思います。
このケース程度であれば格安マウスピース矯正でも対応可能だと思います。
格安マウスピース矯正の問題点
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矯正治療のゴールを設定しないマウスピース矯正システムがある
格安マウスピース矯正の中には矯正治療後のゴールを設定しないものもあります。
患者さんが満足もしくは諦めた時が矯正治療終了のタイミングとなります。
格安マウスピース矯正はマウスピースの作成ごとに治療費を支払うシステムがあります。
そのようはシステムでは簡単な症例でもなかなか歯が動かず、気が付けば治療費の総額がかさみ、中途半端な状態で矯正治療を諦めてしまうケースもあるようです。
そのまま放置すると歯並びは元に戻ってしまいます。
マウスピース矯正において歯の表面に貼り付ける「アタッチメント」は非常に重要です。
アタッチメントがあることで、歯に正しい矯正力が伝わり歯が動きます。
アタッチメントの無いマウスピース矯正では満足できる結果は得られないでしょう。
アタッチメントがあるシステムでもアタッチメントの形や取り付ける位置が適切でないと歯は計画通りに動きません。
適切なアタッチメントを設定できるかが非常に重要です。
また、その場所にどんな形のアタッチメントを付ければ最も効率よく歯が動くのか?
これはメーカー各社が研究をしていますが、症例数が多いメーカーが最も多くのデータを持っています。
多くのデータ持っているメーカーの方がより精度の高いアタッチメントを設定しやすい傾向があります。
マウスピース矯正に関しては歯科医師の経験と使用するシステムにより治療期間や治療結果が異なります。
ご自身に合った治療方法を選択していきましょう。
最低限、治療のゴール(最終的な歯並び)を決めて矯正治療を受けられることを強くお勧めします。
当院のマウスピース矯正については以下をご覧ください。
マウスピース矯正
2021年02月21日
唾液検査システム SillHa(シルハ)について
当院では患者様により口腔内に関心をもって頂くため、唾液検査システムのSillHa(シルハ)を導入しました。

SillHa(シルハ)は2021年2月20日の「世界一受けたい授業」の番組でも紹介され、ご覧になられた方も多いと思います。
SillHa(シルハ)でできること
シルハは口腔内環境に関わる6つの項目を唾液だけで簡単に検査するシステムです。

大きく分けて
の3項目をについて検査をすることができます。
むし歯のリスクについて
SillHa(シルハ)で測定できるむし歯リスクは以下の3つです。
むし歯菌活性度について
口の中のむし歯菌の活性度を調べていきます。むし歯菌の活性度が高いとむし歯のリスクが高くなります。
数値の高い方はむし歯になりやすいと考えられますので、フッ素入りのハミガキ粉などの使用が推奨されます。
酸性度について
お口の中の酸性度を測定します。
酸性度が高いほど歯が溶けやすくなります。
逆流性の胃腸炎の症状のある方はお口の中が酸性になり歯が溶けやすくなります。
緩衝能について
緩衝能とは食事などで酸性になったお口を中和して、中性にする能力です。
緩衝能が低いとお口が酸性になっている時間が長くなり、歯が脱灰(溶ける)する量が増えやすくなります。
一方で緩衝能が高い方は食事などで酸性になったお口をすぐに中性に戻してくれるので歯が溶けにくくなります。
歯周病のリスクについて
SillHa(シルハ)で測定できる歯周病リスクは以下の2つです。
白血球について
白血球は生体防御に関わる細胞です。体の中に侵入した細菌やウイルスを排除する働きがあります。
そのため白血球の数が多くなっていると、細菌やウイルスが多くなっている可能性があり、
歯肉がダメージを受けやすい環境になっている可能性があります。
また、歯周病になっている方や歯周用のリスクの高い方は歯肉が炎症を起こしていることが多く、白血球が多く観察されます。
タンパク質について
歯周病などにより歯肉から出血すると唾液の中に血液中のタンパク質含まれてきます。
そのため唾液中のタンパク質が多いと歯周病のサインの一つになります。
また、お口の中の細菌が多いとタンパク質も増えるため口腔衛生状態が悪いかたはタンパク質の量が多くなります。
口臭のリスクについて
アンモニアについて
口臭の程度を調べる一つの指標としてアンモニアの量が挙げられます。
お口の中が不潔になるとアンモニアの量が増えるため、アンモニアの量によりお口の清潔度や口臭の状態を把握できます。
SillHa(シルハ)の検査方法
SillHa(シルハ)は唾液検査ですので、唾液を採取するだけで検査ができます。
① 専用の洗口水で口をすすぐ

② すすいで吐き出した唾液を試験紙に滴下する

③ 専用の測定器で計測

検査は以上です。
検査結果は約5分で表示されます。

このようにSillHa(シルハ)は手軽でお口の状況や様々なリスクを検査することができます。
ただし、SillHa(シルハ)での検査はあくまでも簡易の検査です。
当院ではさらに精密な検査も可能です。
さらに精密な検査として
「歯周病のDNA検査」

「口臭測定器を用いた口臭測定」

も行っております。
まずは手軽なSillHa(シルハ)を体験してみませんか?
2021年02月20日
オステルビーコンを導入しました

オステルISQ値とは?
オステルビーコンとはスウェーデンのオステルAB社が開発したインプラントの安定性を測定する装置です。
インプラントが骨とどれだけ結合しているかを示す値ISQ(インプラント安定指数)を非接触で測定することができます。
オステル値の測定方法
埋入したインプラント体にスマートペグという専用のネジをはめ込みます。

そのペグに測定器を近づけ、磁気パルスの共振を測定し数値化することでISQ値を測定します。

ISQ値を測定することでこれまでは術者の経験と勘で判断していたインプラントの安定性を客観的に判断することができます。

ISQ値は1~100で示され、60までが安定性が低く、61~70までが中程度の安置性、71以上が高い安定性があるとされています。
なぜISQ値を測定するのか?
インプラントを顎骨に埋め込むと骨の治癒とともにインプラントと骨が結合していきます。
これをオッセオインテグレーションと言います。

オッセオインテグレーションにどれだの期間が必要になるのかは使用するインプラントや骨の質により異なります。

当院で主に使用しているストローマンインプラントではSLA®という表面に特殊な処理を行っています。このSLA®処理を行っているタイプでオッセオインテグレーションの獲得に約3~4か月と言われています。

さらに同じくストローマンインプラントのSLActive®タイプのインプラントでは1~2か月でオッセオインテグレーションを獲得できると言われています。

ストローマン社のインプラントはオッセオインテグレーションがしやすいインプラントとされており、他のメーカーについても3~4か月ほどでオッセオインテグレーションが獲得できると考えられます。
ところが、骨の質が悪い場合、骨を増やす手術(GBR・ソケットリフト・サイナスリフトなど)や抜歯即時埋入(歯を抜くと同時にインプラントを埋入)した場合は状況が異なります。
骨の状態が正常でない場合はオッセオインテグレーションの獲得に時間がかかります。
そのため通常よりも長い期間オッセオインテグレーションを獲得するための期間を設ける齲必要があります。
では、どれだけ長く待てばよいのか?
これは術者の経験や勘に頼ることになります。
オッセオインテグレーションの獲得が十分にできていない時に上部構造を装着するとインプラントの早期脱落の原因になる可能性があります。
逆に待機期間を長くとりすぎるとオッセオインテグレーションを獲得しているのにもかからず上部構造の装着が遅れてしまいます。
ISQ値を測定することで適切なタイミングでインプラントの上部構造を装着することが可能になります。
オステルビーコンにした理由とは?
ISQ値を測定する機械は数種類販売されております。

当院ではコードレスタイプのオステルビーコンを導入しました。
ISQ値はインプラント埋入時の手術時にも測定することがあります。インプラントの手術には様々な器具や機器を使用します。
また。滅菌も徹底して行います。その際にコードのあるタイプで取り回しが悪くなります。
そのため当院ではコードレスタイプのオステルビーコンを導入しました。

オステルビーコンを導入することでこれまで以上に安全なインプラント治療を行うことができます。
2020年10月18日
マウスピース矯正の管理アプリ登場
マウスピース矯正の管理が楽に!
インビザラインのバーチャルアプリ登場!

インビザライン社からマウスピース装着時間の管理とオンライン診療を行うサービスがリリースされました。
このアプリを利用することで、マウスピースの装着時間が適切に守られているか?
予定通りに歯が動いているかを担当医が確認できます。
そのため、歯科医院に通院する回数を減らすことができます。
コロナウイルスウイルス感染拡大が心配される時世ですが、このアプリを利用することで安心してインビザライン(インビザラインGOも含む)での矯正治療を進めていくことができます。
このアプリでできることは以下です。
My Invisalignアプリ
・動画や写真の送信
・過去の送信ログを確認
・歯科クリニックよりオンライン(アプリ上)でフィードバックを得る
ことができます。
当院ではLINEアプリを通じて患者様と連絡をとり、インビザラインでのマウスピース矯正の進行状況を確認しております。
LINEアプリでは写真の送信は可能ですが、患者さんが自分のお口の撮影をすることは困難で、もっぱら文章のみでの連絡が主になっております。
そのため、LINEアプリでは詳細な状況を把握することが困難でした。
今回リリースされたMy Invisalignアプリでは、患者さん自身で規格化された写真や動画が撮影しやすくなっております。

そのため、クリニック側でマウスピース矯正の進行状況を把握しやすくなります。
医院側から写真や動画を送信するようにリマインダーを設定することができますので、適切なタイミングでマウスピース矯正の進行状況を確認することが可能です。
もし、矯正治療の進行状況に問題があれば医院側からアドバイスや来院の指示を行うことができます。
これらの履歴は保存され、順調に矯正治療が進んでいるか患者様自身で確認することができます。
もし、マウスピース矯正の進行状況に問題があればバーチャル診療を行うことも可能です。
オンライン会議ソフト(Zoom)を利用することで、来院することなくクリニックの歯科医師やスタッフとのオンライン診療が可能となりました。
IPR(歯と歯の間を削る)やアタッチメントの付与、各種矯正装置の装着(クリアボタンなど)は来院していただく必要がありますが、
経過観察のみであればMy Invisalignのアプリで可能となりました。
さらに、My Invisalignアプリにはマウスピースの装着時間を管理したり、カレンダー機能があります。

この機能を利用することでマウスピースが適切に装着されているかが判断でき、マウスピースの適切な交換時期を管理できます。
このサービスは始まったばかりですので、当院でも試行錯誤しながら運用方法を確立していく予定です。
2020年10月3日
2020年 日本歯科審美学会で発表を行いました。
コロナ禍の影響でオンラインでの開催になりましたが、「PE-18」にで発表を行いました。
発表内容は以下です。
(一部改変しております)
口腔内スキャナーを利用した矯正治療計画立案の有効性について
Effectiveness of Orthodontic Treatment Planning Using Intraoral Scanner
〇大前正範 1 )、 竹内 摂 2) 、 初岡昌憲 2) 、 岩田有弘 2) 、 山本一世 2)
〇Omae Masanori 1), Takeuchi Osamu 2) , Hatsuoka Masanori 2), Iwata Naohiro 2) , Yamamoto Kazuyo 2)
1)北歯科医院 2 )、大阪歯科大学 歯科保存学講座
1)KitaDetal Clinic 2 )、Department of Operative Dentistry, Osaka Dental University
[目的]
近年、口腔内スキャナを利用した矯正治療が行われている.口腔内スキャナを用いることで、コンピューターソフト上で矯正治療の計画が立てることが可能となった.
今回は比較的軽度の叢生を主訴をとする患者に術前の矯正シミュレーションを行いマウスピース矯正を行った症例を報告する.
[方法]
口腔内スキャナにはiTero( Align 社)を使用した.臼歯部の咬合は AngleⅠ 級で、前歯に軽度の叢生が認めれらる症例について検討を行った.
矯正治療にはインビザラインGO (Align 社)のシステムを利用した.
口腔内スキャナで歯牙のスキャンおよび咬合を採得後、 outcome simulator で矯正後の歯列状態のシュミレーションを行った.その後、クリンチェックを行い矯正治療計画を立案した.
矯正治療終了後、iTero にて歯牙のスキャンを行い矯正治療終了後の状態を記録した.
なお、いずれの症例においても追加アライナーは使用しなかった.
[症例1]
患者:25歳
女性
前歯部叢生を主訴に来院
既往歴に特記事項なし
ケースアセスメント

治療経過

[症例2]
患者:26歳
女性
前歯部叢生を主訴に来院
既往歴に特記事項なし
ケースアセスメント

治療経過

[考察]
両症例ともにoutcome simulator とクリンチェックは同程度の矯正治療の結果を予測した.
また、インビザライン GOでの矯正治療後はクリンチェックで示された矯正治療計画とほぼ同じ結果となった.
本症例ではケースアセスメントの判定において矯正治療の難易度が比較的軽度の症例であった、さらにインビザライン GO では大臼歯の移動は行わない.
そのため、矯正治療の難易度も低く、 outcome simulator とクリンチェックの矯正治療計画に大きな差異が生じなかったと考えれる.
Outcome simulatorはiTero で口腔内スキャン後に数分で矯正治療のシュミレーションが可能である。そのため、矯正治療における治療計画立案に有効であると考えられる.
*本演題に関連し、演者らに開示すべきCOIはありません.
発表内容は以上です。
インビザラインコンヘリシブパッケージ(インビザラインフル)でもiTeroによる outcome simulatorで矯正シュミレーションは可能です。
インビザラインコンヘリシブパッケージは大臼歯の移動も可能で幅広い症例に対応することができます。
噛み合わせの基準となる大臼歯が動かせるため、矯正治療計画が複雑となり、outcome simulator での矯正シミュレーションは参考になりません。
その後のクリンチェックと呼ばれる矯正治療計画を歯科医師が立案する必要があります。
また、マウスピースの数に制限はありません。
一方で、インビザラインGOは大臼歯を動かすことはできません。歯を動かす距離にも制限があり、マウスピースは20ステップまでと制限されています。
そのため、outcome simulator での矯正シュミレーションも予測性が高くなります。
インビザラインGOは第2小臼歯までの上下20本だけの制限もの多いマウスピース矯正システムですが、適応する症例では非常に信頼性の高い矯正治療です。
2020年09月6日
ガイデッドサージェリーについて
当院ではインプラントの埋入オペは必ずサージカルガイドを作成します。
サージカルガイドは今ではかなり一般的にはなっておりますが、当院では約10年前から導入しております。
サージガイドを使用してインプラントの埋入手術を行う方法をガイデッドサージェリーと言います。
サージカルガイドとは
CTデータからコンピューターソフト上で最適なインプラント埋入位置を決め、その位置に正確にドリルで穴をあけるための器具です。
当院ではストローマン社製のインプラントを使用しており、サージカルガイドもストローマン社製の物を使用しております。
以前は歯型を作成して歯科技工士の手で作成しておりました。
手順は以下です
① CTを撮影しインプラントを埋入できる骨があるか確認
② 歯型を取り、模型を作成
③ 歯科技工士がワックスアップを行い、インプラントで歯を入れた状態を再現
④ ③で作成したワックスアップを取り込んだマウスピースを作成
⑤ ④で作成したマウスピースをお口にはめた状態でCTを撮影
⑥ CTデータをコンピューターソフトに取り込み、インプラント埋入位置の設計
⑦ 設計データを元にマウスピースを加工して、歯科技工士がサージカルガイドを作成
このように非常に手間のかかる作業でした。
歯科技工士による作業が2回必要(②③、⑦)になります。そのたびに宅配便で技工所に模型を送る必要がありました。
また、CT撮影が2回(①と④)必要となります。
最短でも1か月近くはこの作業に期間を要しておりました。
ところが、ここ数年でセレックなどの光学印象機器が普及し、型を取らなくてもコンピューターソフト上で簡単にサージカルガイドが作成できるようになりました。
手順は以下のように短種されました。
① CTを撮影しインプラントを埋入できる骨があるか確認
② セレック(光学印象機器)で歯型をスキャン①と②のデータをコンピューターソフト上に取り込み、インプラント埋入位置の設計

③ 設計データをインターネットでメーカーに送信し、3Dプリンターでサージカルガイドを作成

このように作業手順が大幅に減りました。
また、設計データをインターネットでメーカーに送信できるので納期をお幅に短縮されました。
数日でサージカルガイドが作成できるようになりました。
デジタル技術の進歩と普及のお揚げでインプラント治療はより安全でよりスピーディーになりました。
インプラント治療に限らず、セレックなどのCAD/CAM技術を利用し即日でクラウンを作成することも可能となりました。


矯正治療も歯型を光学印象機器(iTero)で歯型をスキャンするだけで矯正後の歯並びをシュミレーションしたり、矯正器具をすぐに作成することが可能となりました。


健康保険にもCAD/CAM技術を用いた治療方法が導入されています。これからの歯科医療従事者は手先の器用さだけではなく、デジタル技術を扱う知識も必須となってきております。
2020年04月23日
CAD/CAM冠とは?
その①CAD編
先日のブログでCAD/CAM冠について簡単にご紹介させていただきました。
CADとはComputer-Aided Design の頭文字をとったものです。
コンピュータ(ソフト)支援設計とも訳されます。コンピュータ(ソフト)を用いて設計をしたり、
コンピュータ(ソフト)による設計支援ツールのことを指します。
歯科で用いられる間接法の修復物は模型上で手作りで設計されます。
まず、印象
材で歯型を採ります。
採った歯型に石膏を流し、模型を作成します。
模型を咬合器という人工的に噛み合わせを再現する器具に取り付けます。
こうすることで、人工的に歯と噛み合わせを再現することができます。
この上で、ワックスを用いて歯科技工士が修復物を作成していきます。
ワックスを盛り足したり、削ったりしながら歯の形や調整します。
どれだけの高さで噛み合わせを再現するか、隣の歯との接触の仕方は?
これらを0.1mm以下の精度で調整していきます。
そのためワックスアップには歯科技工士の高い技術と経験が必要になります。
このワックスアップをコンピューターで行うのがCADです。
コンピューターで歯の設計をするため歯の形をコンピューターに取り組む必要があります。
この作業には主に光学印象機器(スキャナー)が使用されます。
光学印象とは従来の印象材による型取りではなく、特殊なカメラで歯を撮影して歯の形をコンピューターに取り込みます。
取り込んだデータからコンピューター上で3Dモデルを構築します。
こちらは形成した歯の型取りのスキャン動画です。
こちらは対合歯(噛み合う歯)と噛み合わせのスキャン動画です。
これが、従来の石膏模型と同じ役割を担います。
作成された3Dモデル上で、修復物の設計をします。
設計するソフトの支援により、わずか数分で修復物の設計が自動的に行われます。
こちらはCAD3Dモデルのトリミングとマージン設定の動画です。
こちらはクラウンの設計の動画です。
あらかじめパラメーターを設定することで、対合歯(噛み合う歯)と噛み合う力や、隣の歯との接触する程度を自動的に再現できます。
そのため、技術や経験が不要で熟練の歯科技工士を同等の設計をCADで行うことができます。
さらに、CADによる設計は従来の石膏模型よりも有利な点があります。
石膏模型で修復物を作成する場合、
・歯型を採る
・石膏模型を製作する
・咬合器に石膏模型を装着する
という作業が必要です。
これらの作業全てでずれが生じていきます。
まず、歯型を採るときには印象材が微妙に収縮します。。
そして、歯型に石膏を流して固めて模型を作成しますが、石膏は固まる時に少し膨張します。
咬合器に石膏模型を装着するときに石膏が微妙に膨張します。
これらのずれをうまく歯科技工士が調整して修復物を仕上げています。
ところが、光学印象によるCADによる設計はこれらのずれが生じません。
そのため、ずれの少ない精密な修復物を設計することができます。
2020年04月18日
クリンチェック解説④
25歳女性のケースです。
本ケースで矯正終了時の口腔内写真もご提示します。
主訴は上下の前歯の叢生(ガタガタ)です。
術前の口腔内写真です。

上下顎の前歯に叢生が見られます。
正面からみるとそれほど気にならないぐらいですが、
上顎面観では上顎前歯に翼状捻転(ねじれ)と叢生が確認できます。
下顎の叢生は軽度です。
ケースアセスメントによる診断です。

上下とも叢生の改善の難易度は低いとの判定です。
iTeroによるシュミレーションです。



上下とも叢生が改善されています。
インビザラインGOで矯正治療を進めていくことになりました。
次にクリンチェックです。


iTeroのシュミレーションとほぼ同じような矯正計画になりました。
上顎の歯は翼状捻転もあり中程度の叢生がありますので、IPR(歯と歯の間を削る)が設定されています。
下顎の叢生は軽度のため、IPRは必要のない計画となりました。
必要なステップ数は15ステップ、約5か月の矯正期間です。
この患者様は他県より通院されてこおられますので、通院回数をできるだけ少なくし、LINEのアプリを利用して経過観察を行いました。
矯正治療終了後の口腔内写真です。

クリンチェックで計画された歯並びとほぼ同じ歯並びを実現できました。
インビザラインではかなり正確に歯を動かすことができます。
これはマウスピース矯正の大きな長所と言えます。
2020年04月18日
続・保険で白い歯できる?
前回は健康保険適応で可能な直接法での白い歯の治療を解説しました。
今回は間接法により保険でできる白い歯に関して解説します。
間接法とはいわゆる型取りを行い、作業用の模型を作成し修復物を作成します。
いわゆる銀歯など、金属を用いた修復物はすべて間接法で作成されています。
(注 アマルガム充填は水銀・銀・錫などを用いた合金で直接法で充填しますが、近年は用いられてない修復法なのでここでは省きます。)
この間接法ですが、白い歯を作ることも可能です。
形状により2種類に分かれます。
インレー
クラウン
素材としては
・コンポジットレジン
・セラミック
が用いられます。
なお、ハイブリッドセラミックと言われる材料もありますが、こちらはコンポジットレジンです。
自費治療用の開発されたコンポジットレジンで保険治療用のコンポジットレジンと混同しないようにハイブリッドセラミックと表現されることがあります。
インレー
部分的な詰め物です。
削った穴に、作成した詰め物をはめ込みます。
基本的に小さなむし歯の治療の時に選択される修復法です。
素材としては金属、コンポジットレジン(ハイブリッドセラミック含む)、セラミックが用いられます。
この中で健康保険適応でかつ白い素材はコンポジットレジンです。

コンポジットレジンインレーは型取りした模型上で作成します。
コンポジットレジンのペーストを窩洞(削った穴)に入れて、光を当てて固めて(重合させて)作成します。
ただし、完全には固まり切らず未重合レジンが残存します。
未重合レジンが存在すると強度の低下を招き、変色しやすくなります。
長所として
模型上で作成できるので直接法に比べ形が調整しやすい
また、出力の強い光照射器を用いてコンポジットレジンを固める(重合)させるので、強度も高くなる
短所として
直接法に比べて歯を削る量が多くなる
型取りする手間がかかる
健康保険では採算がとれない
強い力がかかる部位だと割れる
未重合レジンが存在するので変色する
クラウン
歯全体を被せる方法です。
歯の全周を削り、型をとりクラウンを作成します。
素材としてはインレーと同様に、金属、コンポジットレジン、セラミックが用いられ、
これらを組み合わせた修復物もあります。
健康保険適応で白いクラウンは
・硬質レジンジャケット冠
・硬質レジン前装冠
・CAD/CAM冠
があります。
硬質レジンジャケット冠
硬質レジンジャケット冠はコンポジットレジンインレーと同様に、コンポジットレジンでクラウンを作成します。
そのため、強度に劣るので噛み合わせの力が強くかかる部位には使用できません。
また、未重合レジンが残存するので変色してきます。
そのため、あまり用いられることはありません。
硬質レジン前装冠
金属のクラウンの表面にコンポジットレジンを貼りつけたクラウンです。
内側に金属が入っているため、強度があります。
また、表面に白いプラスチックを貼っているため表は白く見えます。
内側に金属が入っているため、光を透過せず白さに透明感がなく自然な見た目になりません。。
表面のコンポジットレジンは光照射で固めるタイプなので、未重合レジンが残ります。
そのため、変色して黄ばんできます。
また、金属からコンポジットレジンがはがれたり摩耗歯たりして内側の金属が露出してしまうこともあります。
金属を使用するので金属アレルギーの心配もあります。
欠点も多い修復物ですが、金属を使用しているため強度が高く、ブリッジなどにも対応できるためよく用いられる修復物です。
CAD/CAM冠
近年、健康保険に導入された修復物です。
CAD(computer-aided design)、コンピューターで修復物を設計します。

CADで設計した修復物をCAM(computer aided manufacturing)、コンピューターで制御された機械で作成します。

素材としては金属、コンポジットレジン、セラミックです。
健康保険で使用でき素材はコンポジットレジンです。
CAD/CAM冠で用いるコンポジットレジンは圧縮し強度を上げたうえで、ほぼ完全に重合させたものをブロック状にして使用します。
そのため、コンポジットレジンの欠点である強度と未重合レジンの問題を解決できます。

CAD/CAM冠用のコンポジットレジンブロック(以下、CAD/CAMブロック)を削り出して歯を作成します。
最近では健康保険でも大臼歯(条件付き)で適用されるようになりました。
未重合レジンがほとんど存在しないので、変色も少なくなります。
強度も高く、未重合レジンも少ないCAD/CAM冠ですが、欠点もあります。
欠点はブリッジには対応できない(健康保険では)こと、機械が高額ということです。
しかしながら今後は主流になる修復物と考えられます。
以上にように健康保険でも白い歯にすることは可能です。
修復法や修復材料、歯を削る量、噛み合わせなど様々なことを考慮しながら適切な治療方法を選択する必要があります。
かかりつけの歯科医師としっかりと相談して治療方法を選択しましょう。
2020年03月30日
保険で白い歯はできる?
最近では健康保険でも白い歯で治療できるケースが増えてきました。
今回はそれらについて解説します。
原則として健康保険は療養に対する給付なので、審美目的では健康保険は適応できません。
健康保険適応で白い材料での修復方法は2種類に分けられます。
直接法
直接法とはその名の通り、直接材料を詰めて治療する方法です。
また、むし歯を削った穴(窩洞)に材料を詰めていくので充填と呼ぶこともあります。
直接法では主に以下の2種類の方法があります。
・コンポジットレジン充填
・セメント充填
コンポジットレジン充填とは

むし歯を除去してできた穴にコンポジットレジン(CR)を詰めて修復する方法です。
直接法での治療はCRを用いることが多く、直接法=CR充填といっても過言ではありません。
コンポジットレジンは無機質からなるフィラーとマトリックスレジンで構成されています。
セラミックの粉末(フィラー)につなぎとして樹脂(マトリックスレジン)を混ぜ、
ペースト状にしているとイメージして頂ければわかりやすいと思います。

青い光を当てると固まるように設計されており、歯科用プラスチックと表現されることもあります。

コンポジットレジンの特徴としては
長所として
成形材料(プラスチック)なので、形が自由に作れる
色が白い
そこそこ強度がある
ということがあげられます。
コンポジットレジンには強度を上げるためフィラーが混ぜられています。
重量比で約70%ほどがフィラーなので、セラミックほどではありませんがそこそこ高い強度があります。
歯の色に合わせて多くの色調のペーストが用意されています。
そのため、前歯のむし歯や奥歯の小さなむし歯の治療によく使われます。
一方で欠点として
奥歯の強い力には耐えらない
変色する
治療手順が煩雑でテクニックセンシティブ
ということがあげられます。
コンポジットレジンは強度を上げるためのフィラーとマトリックスレジンの混合材料です。
そのため、セラミックと樹脂の長所を合わせ持ちます。
純セラミックに比べ、樹脂が含まれることでしなりが生まれます。
そのため、セラミックに比べて割れにくいこともあります。
ところが、直接法でのコンポジットレジンはお口の中で重合(固める)作業を行いますが、
樹脂を完全に重合させることができず未重合レジンが残存します。
(ホットケーキでいう生焼け状態です)
この未重合部分が残存することにより強度が下がったり、変色しやすい原因となります。
そのため、直接歯と歯がかみ合う咬場所にはコンポジットレジン充填はあまり選択されません。
直接咬合力がかからない部位には適している治療方法と言えます。
セメント充填
歯科用のセメント(粉と液を混ぜて固まるもの)をむし歯を除去した穴に詰める方法です。
歯科用のセメントは用途により多くの製品がありますが、むし歯などの修復治療に使われるものはグラスアイオノマーセメントにほぼ限定されます。
長所として
接着操作が不要なので、処置が簡便
フッ素を含むのでむし歯予防効果が期待できる
ということがあげられます。
セメント自体に歯とくっつく性質がありますので、CR充填とは異なり接着操作が不要です。
(ただし、接着力は低い)
また、フッ素を含有しているのでむし歯の予防効果も期待できます。
強度が低い
接着力が低い
ということがあげられます。
そのため、乳歯の治療や応急的な治療によく用いられる治療方法です。
CR充填、セメント充填のどちらも直接お口のなかで修復作業を行います。
また、材料自体の強度の問題もあり大きな穴を埋めたり、被せ物(クラウン)を作成することはできません。
このような場合は間接法による修復を行います。