2020年04月23日
CAD/CAM冠とは?
その①CAD編
先日のブログでCAD/CAM冠について簡単にご紹介させていただきました。
CADとはComputer-Aided Design の頭文字をとったものです。
コンピュータ(ソフト)支援設計とも訳されます。コンピュータ(ソフト)を用いて設計をしたり、
コンピュータ(ソフト)による設計支援ツールのことを指します。
歯科で用いられる間接法の修復物は模型上で手作りで設計されます。
まず、印象
材で歯型を採ります。
採った歯型に石膏を流し、模型を作成します。
模型を咬合器という人工的に噛み合わせを再現する器具に取り付けます。
こうすることで、人工的に歯と噛み合わせを再現することができます。
この上で、ワックスを用いて歯科技工士が修復物を作成していきます。
ワックスを盛り足したり、削ったりしながら歯の形や調整します。
どれだけの高さで噛み合わせを再現するか、隣の歯との接触の仕方は?
これらを0.1mm以下の精度で調整していきます。
そのためワックスアップには歯科技工士の高い技術と経験が必要になります。
このワックスアップをコンピューターで行うのがCADです。
コンピューターで歯の設計をするため歯の形をコンピューターに取り組む必要があります。
この作業には主に光学印象機器(スキャナー)が使用されます。
光学印象とは従来の印象材による型取りではなく、特殊なカメラで歯を撮影して歯の形をコンピューターに取り込みます。
取り込んだデータからコンピューター上で3Dモデルを構築します。
こちらは形成した歯の型取りのスキャン動画です。
こちらは対合歯(噛み合う歯)と噛み合わせのスキャン動画です。
これが、従来の石膏模型と同じ役割を担います。
作成された3Dモデル上で、修復物の設計をします。
設計するソフトの支援により、わずか数分で修復物の設計が自動的に行われます。
こちらはCAD3Dモデルのトリミングとマージン設定の動画です。
こちらはクラウンの設計の動画です。
あらかじめパラメーターを設定することで、対合歯(噛み合う歯)と噛み合う力や、隣の歯との接触する程度を自動的に再現できます。
そのため、技術や経験が不要で熟練の歯科技工士を同等の設計をCADで行うことができます。
さらに、CADによる設計は従来の石膏模型よりも有利な点があります。
石膏模型で修復物を作成する場合、
・歯型を採る
・石膏模型を製作する
・咬合器に石膏模型を装着する
という作業が必要です。
これらの作業全てでずれが生じていきます。
まず、歯型を採るときには印象材が微妙に収縮します。。
そして、歯型に石膏を流して固めて模型を作成しますが、石膏は固まる時に少し膨張します。
咬合器に石膏模型を装着するときに石膏が微妙に膨張します。
これらのずれをうまく歯科技工士が調整して修復物を仕上げています。
ところが、光学印象によるCADによる設計はこれらのずれが生じません。
そのため、ずれの少ない精密な修復物を設計することができます。
2020年04月18日
クリンチェック解説④
25歳女性のケースです。
本ケースで矯正終了時の口腔内写真もご提示します。
主訴は上下の前歯の叢生(ガタガタ)です。
術前の口腔内写真です。

上下顎の前歯に叢生が見られます。
正面からみるとそれほど気にならないぐらいですが、
上顎面観では上顎前歯に翼状捻転(ねじれ)と叢生が確認できます。
下顎の叢生は軽度です。
ケースアセスメントによる診断です。

上下とも叢生の改善の難易度は低いとの判定です。
iTeroによるシュミレーションです。



上下とも叢生が改善されています。
インビザラインGOで矯正治療を進めていくことになりました。
次にクリンチェックです。


iTeroのシュミレーションとほぼ同じような矯正計画になりました。
上顎の歯は翼状捻転もあり中程度の叢生がありますので、IPR(歯と歯の間を削る)が設定されています。
下顎の叢生は軽度のため、IPRは必要のない計画となりました。
必要なステップ数は15ステップ、約5か月の矯正期間です。
この患者様は他県より通院されてこおられますので、通院回数をできるだけ少なくし、LINEのアプリを利用して経過観察を行いました。
矯正治療終了後の口腔内写真です。

クリンチェックで計画された歯並びとほぼ同じ歯並びを実現できました。
インビザラインではかなり正確に歯を動かすことができます。
これはマウスピース矯正の大きな長所と言えます。
2020年04月18日
続・保険で白い歯できる?
前回は健康保険適応で可能な直接法での白い歯の治療を解説しました。
今回は間接法により保険でできる白い歯に関して解説します。
間接法とはいわゆる型取りを行い、作業用の模型を作成し修復物を作成します。
いわゆる銀歯など、金属を用いた修復物はすべて間接法で作成されています。
(注 アマルガム充填は水銀・銀・錫などを用いた合金で直接法で充填しますが、近年は用いられてない修復法なのでここでは省きます。)
この間接法ですが、白い歯を作ることも可能です。
形状により2種類に分かれます。
インレー
クラウン
素材としては
・コンポジットレジン
・セラミック
が用いられます。
なお、ハイブリッドセラミックと言われる材料もありますが、こちらはコンポジットレジンです。
自費治療用の開発されたコンポジットレジンで保険治療用のコンポジットレジンと混同しないようにハイブリッドセラミックと表現されることがあります。
インレー
部分的な詰め物です。
削った穴に、作成した詰め物をはめ込みます。
基本的に小さなむし歯の治療の時に選択される修復法です。
素材としては金属、コンポジットレジン(ハイブリッドセラミック含む)、セラミックが用いられます。
この中で健康保険適応でかつ白い素材はコンポジットレジンです。

コンポジットレジンインレーは型取りした模型上で作成します。
コンポジットレジンのペーストを窩洞(削った穴)に入れて、光を当てて固めて(重合させて)作成します。
ただし、完全には固まり切らず未重合レジンが残存します。
未重合レジンが存在すると強度の低下を招き、変色しやすくなります。
長所として
模型上で作成できるので直接法に比べ形が調整しやすい
また、出力の強い光照射器を用いてコンポジットレジンを固める(重合)させるので、強度も高くなる
短所として
直接法に比べて歯を削る量が多くなる
型取りする手間がかかる
健康保険では採算がとれない
強い力がかかる部位だと割れる
未重合レジンが存在するので変色する
クラウン
歯全体を被せる方法です。
歯の全周を削り、型をとりクラウンを作成します。
素材としてはインレーと同様に、金属、コンポジットレジン、セラミックが用いられ、
これらを組み合わせた修復物もあります。
健康保険適応で白いクラウンは
・硬質レジンジャケット冠
・硬質レジン前装冠
・CAD/CAM冠
があります。
硬質レジンジャケット冠
硬質レジンジャケット冠はコンポジットレジンインレーと同様に、コンポジットレジンでクラウンを作成します。
そのため、強度に劣るので噛み合わせの力が強くかかる部位には使用できません。
また、未重合レジンが残存するので変色してきます。
そのため、あまり用いられることはありません。
硬質レジン前装冠
金属のクラウンの表面にコンポジットレジンを貼りつけたクラウンです。
内側に金属が入っているため、強度があります。
また、表面に白いプラスチックを貼っているため表は白く見えます。
内側に金属が入っているため、光を透過せず白さに透明感がなく自然な見た目になりません。。
表面のコンポジットレジンは光照射で固めるタイプなので、未重合レジンが残ります。
そのため、変色して黄ばんできます。
また、金属からコンポジットレジンがはがれたり摩耗歯たりして内側の金属が露出してしまうこともあります。
金属を使用するので金属アレルギーの心配もあります。
欠点も多い修復物ですが、金属を使用しているため強度が高く、ブリッジなどにも対応できるためよく用いられる修復物です。
CAD/CAM冠
近年、健康保険に導入された修復物です。
CAD(computer-aided design)、コンピューターで修復物を設計します。

CADで設計した修復物をCAM(computer aided manufacturing)、コンピューターで制御された機械で作成します。

素材としては金属、コンポジットレジン、セラミックです。
健康保険で使用でき素材はコンポジットレジンです。
CAD/CAM冠で用いるコンポジットレジンは圧縮し強度を上げたうえで、ほぼ完全に重合させたものをブロック状にして使用します。
そのため、コンポジットレジンの欠点である強度と未重合レジンの問題を解決できます。

CAD/CAM冠用のコンポジットレジンブロック(以下、CAD/CAMブロック)を削り出して歯を作成します。
最近では健康保険でも大臼歯(条件付き)で適用されるようになりました。
未重合レジンがほとんど存在しないので、変色も少なくなります。
強度も高く、未重合レジンも少ないCAD/CAM冠ですが、欠点もあります。
欠点はブリッジには対応できない(健康保険では)こと、機械が高額ということです。
しかしながら今後は主流になる修復物と考えられます。
以上にように健康保険でも白い歯にすることは可能です。
修復法や修復材料、歯を削る量、噛み合わせなど様々なことを考慮しながら適切な治療方法を選択する必要があります。
かかりつけの歯科医師としっかりと相談して治療方法を選択しましょう。